数値流体解析

波動型人工心臓ポンプ(波動ポンプ)は,1992年阿部らにより考案された.ディスクが歳差揺動運動を行うことによりディスク・ハウジング間の最狭窄部が流入口から流出口へ移動し,血液の駆出を行う(movie1) .本ポンプは原理的に容積型ポンプであり,回転型ポンプに近い構造のため小型化が可能である.

 ポンプ設計段階では,高効率化だけでなく,血液適合性の向上が重要な目標となる.特にポンプ内のせん断応力の曝露による血球破壊(溶血)はポンプ作動初期段階において問題となる.経験的に溶血はディスク・ハウジングの間隔(クリアランス)を大きくすることにより減少するが,逆にクリアランス領域での逆流が増加し性能は低下すると考えられる.このようにポンプ性能と溶血にはトレードオフが存在するため,ポンプの数値シミュレーションを行い,それぞれの指標について評価し,設計にフィードバックすることが有効であると考えられる.

 波動ポンプの最適設計を実施するため,上下面・側面クリアランスを設計パラメーターとして,数値流体力学(Computational Fluid Dynamics; CFD)解析(movie2)により拍出特性・溶血特性を評価した.本研究は秋田県立大学矢野哲也博士との共同研究である.

movie1 : 波動ポンプの動作原理

movie2 : 流体解析結果